2020年8月掲載
私が時々行く焼き鳥店にも客足が戻ってきました。
小さな店ですが、週末にはカウンター席も座敷もほぼ満席です。
40代半ばの店主は、時折カウンターの客と会話したり店員に指示を出したりしますが、ほとんどの時間黙々と炭火の上の鶏肉を焼いています。
ただ焼くだけではありません。
「串打ち三年、焼き一生」という言葉もあるくらい、串を打つのにも焼き加減を見るのにも熟練した職人技が必要で、それは一朝一夕に身につくものではないのです。
私がその店に行く理由は、店主の腕がいいからだけではありません。
いつも変わらない姿勢で真摯に串や客に向き合っているからです。
当たり前のことを当たり前に続けているからです。
今なら感染回避対策、以前も今も衛生管理など。そのようなところから、安心感があるからなのです。
「手に職をつける」という言葉があります。
生計を立てるための仕事や、仕事につくための技能や資格を獲得するという意味です。
特別な技能や資格でなくてもかまいません。
IT関連のスキル、医療・福祉関連資格、機械操作、語学力など、何か強みと思っている事や得意分野と考えれば良いでしょう。
もし「手に職がない」と思うならば、これから手に職をつけることを考えてみても良いのではないでしょうか。
今は、未経験分野の職業訓練を受けたり、新たな資格にチャレンジしたりする良い機会かもしれません。
そして、手に職をつけるまでのチャレンジや努力も必要ですが、手に職がついてからもそれを磨き続けて行くことが、より大切なのでしょう。
店主は、必ず帰り際の客を見て手を止めて「ありがとうございました。」とあいさつします。
私には客の表情を見て、仕事の出来ばえを確認しているように思えます。
店主はこれからもこうして、一生焼き続けるのでしょう。
職人としての生きざまに敬意を感じます。
キャリアコンサルタント 久保賢司