教育訓練費増の税優遇 賃上げ効果小も7割超で“過大控除”
従業員の教育訓練費を増やした法人への税の優遇措置
「賃上げ税制」の一環で始まった従業員の教育訓練費を増やした法人への税の優遇措置について会計検査院が調べたところ、賃上げ効果が非常に小さかった一方で、対象の7割余りが追加でかかった費用を上回る税額控除を受けていたことがわかりました。
国は、賃上げを促すため2013年度から給与などを増やした割合に応じて法人税の税額控除を行い、さらに2018年度からは学び直しや研修といった従業員の教育訓練費を増やした企業にも、一定の条件を満たした場合に追加の税額控除を行っています。
会計検査院が、2021年度までの4年間にこの追加の税額控除を受けたのべ1万2800余りの法人について調べたところ、76%にあたるのべ9812法人が追加でかかった費用を上回る税額控除を受け、その総額が214億円にのぼっていたことがわかりました。
追加控除を受けた額は、大企業はかかった費用の2倍前後、中小企業は4倍前後で、中には数十万倍にのぼったケースもあったということです。
試算の結果、こうした教育訓練費の増額に伴う優遇措置は賃上げ効果が非常に小さいとみられるということで、会計検査院は財務省と経済産業省に制度の見直しを検討するよう求めました。
財務省は「会計検査院の指摘を踏まえて税制の実態を確認し、妥当性を検証したい」とコメントしています。
また、経済産業省は「会計検査院の指摘や財務省の分析を踏まえて対応していきたい」とコメントしています。
配信元:NHK NEWS WEB
配信日:2025年1月15日
今回のこの報道に関して
会計検査院が調査発表した従業員の教育訓練費に関する税優遇措置の結果は、現行制度の課題を浮き彫りにしました。
賃上げ促進を目的とした税額控除制度において、教育訓練費の増額を条件とした追加控除が賃上げ効果にほとんど寄与していないことが明らかになり、制度の実効性が問われています。
特に、優遇措置を受けた法人の7割以上が、追加で発生した費用を大きく上回る税額控除を得ていた事実は、財源効率や公平性の観点から大きな課題といえます。
一部の中小企業では控除額が数十万倍に達するケースも見られ、制度が本来の目的を果たしているか疑問が残ります。
会計検査院は、財務省と経済産業省に対し、制度の見直しを検討するよう求めました。
これを受け、財務省は「指摘を踏まえ税制の実態を確認し、妥当性を検証する」とコメントし、経済産業省も「指摘や財務省の分析を踏まえ対応する」と述べています。
今後、賃上げ効果を高めるための明確な目標設定と、実態に即した政策立案が求められます。
制度が効果的に機能し、従業員のスキル向上や賃上げ促進を通じて日本全体の経済成長に寄与する改革が進むことを期待します。
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